本当に悪いのは誰?家族の闇にかくれた構造

毒親として問題になる中で一番多いのは、母と娘のパターンです。子育てを主にするのは母親なので、父親より母親が問題になりやすいのは自然なことです。では、子どもの側はなぜ娘の方が巻き込まれやすいかというと、やはり同性だからだと思います。

男の子は母親にとって異性ですから、多くの母親にとって息子のことは分からなくて当たり前という認識が多かれ少なかれあると思います。逆に息子からも自分のことは理解してもらえなくても仕方ないと、あきらめもつきやすいでしょう。それゆえ、心理的に距離を取りやすくなり、それが息子の自立につながっていきます。

一方、娘となると、自分と同じ女の子です。自分の子供時代からの人生を娘を通してやり直せるかもしれないという感覚をもってしまいやすいのです。自分がやりたくてもできなかったことを娘にやらせて、うまくいかないとまるで自分が失敗させられたかのような気持ちになり、必要以上に娘を叱責してしまうこともあります。

母親自身が夫と不仲な場合、自分と同じような失敗をさせたくないと、娘の配偶者選びに口を出しすぎてしまい、娘の意思を無視してしまいがちになります。逆に、ひどく満たされていない母親は、娘だけが幸せになることに嫉妬するあまり、結婚させないように仕向けたり、結婚した娘には離婚をすすめたりすることさえあります。こういう母親は、思い切り悪意があってやっていることはむしろ稀で、無自覚なことが多いです。娘の人生を邪魔しているという自覚がないぶん、とても厄介です。

さて、ここまで、父親がほとんど出てこないことにお気づきでしょうか。母親と娘が濃密すぎてややこしい関係に陥っている間、父親は何をしているのでしょう?

多くの場合、父親は何もしていません。仕事が忙しくて家にいないか、いても空気のようにただそこにいるだけです。母親は父親とうまくいかず、良くも悪くも娘にのめり込みます。自分の分身のように扱ったり、夫の愚痴を聞いてくれるカウンセラーのように扱ったり。耐えられなくなった娘が母親に歯向かって大ゲンカになっても、隣で父親は何も聞こえていないかのように新聞を読み続けたりしています。

きちんと機能している家族の中で育った人には信じがたい光景だと思います。家庭内で何か問題が起きれば、まともな父親なら妻や娘に向き合って、解決しようとするでしょう。そうすれば母親も孤独ではないし、夫婦仲もそこまで悪くはならないでしょうから、満たされなさを娘にぶつけることもないのです。

つまり、母親が毒母になるのを防ぐ力が父親にはあるのです。逆に言えば、毒母を作っているのは父親だという側面もあるわけです。そう考えると、直接的に娘に毒を撒いているのは母親であっても、母親ただ一人を悪者にするのは、いささか気の毒だとも言えますね。家族って、このようにとても複雑な構造になっているもので、そこに気づくといろんな問題が見えやすくなり、心の中が整理しやすくなります。

Categories: archive